『史記』現代語訳:五帝本紀・帝舜(2)

『史記』原文

舜入于大麓,烈風雷雨不迷,堯乃知舜之足授天下。堯老,使舜攝行天子政,巡狩。舜得舉用事二十年,而堯使攝政。攝政八年而堯崩。三年喪畢,讓丹朱,天下歸舜。而禹、皋陶、契、后稷、伯夷、夔、龍、倕、益、彭祖自堯時而皆舉用,未有分職。於是舜乃至於文祖,謀于四嶽,辟四門,明通四方耳目,命十二牧論帝德,行厚德,遠佞人,則蠻夷率服。舜謂四嶽曰:「有能奮庸美堯之事者,使居官相事?」皆曰:「伯禹為司空,可美帝功。」舜曰:「嗟,然!禹,汝平水土,維是勉哉。」禹拜稽首,讓於稷、契與皋陶。舜曰:「然,往矣。」舜曰:「棄,黎民始饑,汝后稷播時百穀。」舜曰:「契,百姓不親,五品不馴,汝為司徒,而敬敷五教,在寬。」舜曰:「皋陶,蠻夷猾夏,寇賊姦軌,汝作士,五刑有服,五服三就;五流有度,五度三居:維明能信。」舜曰:「誰能馴予工?」皆曰垂可。於是以垂為共工。舜曰:「誰能馴予上下草木鳥獸?」皆曰益可。於是以益為朕虞。益拜稽首,讓于諸臣朱虎、熊羆。舜曰:「往矣,汝諧。」遂以朱虎、熊羆為佐。舜曰:「嗟!四嶽,有能典朕三禮?」皆曰伯夷可。舜曰:「嗟!伯夷,以汝為秩宗,夙夜維敬,直哉維靜絜。」伯夷讓夔、龍。舜曰:「然。以夔為典樂,教稚子,直而溫,寬而栗,剛而毋虐,簡而毋傲;詩言意,歌長言,聲依永,律和聲,八音能諧,毋相奪倫,神人以和。」夔曰:「於!予擊石拊石,百獸率舞。」舜曰:「龍,朕畏忌讒說殄偽,振驚朕眾,命汝為納言,夙夜出入朕命,惟信。」舜曰:「嗟!女二十有二人,敬哉,惟時相天事。」三歲一考功,三考絀陟,遠近眾功咸興。分北三苗。

『史記』書き下し

舜、大麓に入り、烈風雷雨にも迷わず。堯、乃ち舜の天下を授くるに足るを知る。堯老ゆ。舜をして天子の政を摂行し、巡狩せしむ。舜、挙げらるるを得て、事を用いること二十年にして、堯、摂政せしむ。摂政すること八年にして堯崩ず。三年して喪畢り丹朱に譲る。天下舜に帰す。
而して禹・皐陶(コウトウ)・契(ゲイ)・后稷(コウショク)・伯夷・虁(キ)・龍・倕(スイ)・益・彭祖、舜の時自り、皆挙用せられたれども、未だ分職有らず。是に於いて舜乃ち文祖に至り、四嶽に謀り、四門を辟き、四方の耳目に明通す。十二牧に命ず、帝徳を論じ、厚徳を行い、佞人を遠ざくれば、則ち蛮夷、率いて服せん、と。舜、四嶽に謂いて曰く、「能く庸を奮(あきら)かにし、堯の事を美くする者有らば、官に居り、事を相けしめん。」皆曰く、「伯禹、司空為りて、帝の功を美くす可し。」舜曰く、「然り。嗟(ああ)、禹や、汝、水土を平らにせよ。維れ是れに勉めよ。」禹、拜み稽首して、稷・契と皐陶に譲る。舜曰く、「然り。往けよ。」舜曰く、「棄よ、黎民始めて飢ゆ。汝、后稷たりて、時に百穀を播け。」舜曰く、「契よ、百姓、親しまず。五品、馴(したが)わず。汝、司徒と為り、敬みて五教を敷き、寛きに在れ。」舜曰く、「皐陶よ、蛮夷、夏を猾(みだ)し、寇賊・姦軌あり。汝、士と作れ。五刑は服有り。五服は三就あり。五流は度(タク)あり。五度は三居あり。維れ明らかに能く信なれ。」
舜曰く、「誰か能く予が工に馴わん。」皆曰く、「垂、可なり。」是に於いて垂を以て共工と為す。舜曰く、「誰か能く予が上下の草木鳥獣に馴わん。」皆曰く、「益、可なり。」是に於いて益を以て朕が虞と為す。益、拜稽首して、諸臣・朱虎・熊羆に譲る。舜曰く、「往け。汝、諧(やわら)げよ。」遂に朱虎・熊羆を以て佐と為す。舜曰く、「嗟、四嶽よ、能く朕が三礼を典(つかさど)るもの有らんか。」皆曰く、「伯夷、可なり。」舜曰く、「嗟、伯夷よ、汝を以て秩宗と為さん。夙夜、維れ敬み、直なれや。維れ静潔なれ。」伯夷、虁・龍に譲る。舜曰く、「然り。」虁を以て典楽と為し、穉子(チシ)を教えしむ。
直にして而も温なれ。寛にして而も栗なれ。剛にして而も虐ぐる無かれ。簡にして而も傲る無かれ。詩は意を言い、歌は言を長くし、聲は永きに依り、律は聲を和す。八音は能く諧(やわら)ぎ、倫を相奪うこと毋くんば、神人以て和せん。」虁曰く、「於(ああ)、予れ、石を撃ち、石を拊てば、百獣率いて舞わん。」舜曰く、「龍よ、朕れ、讒説の偽を殄(た)ち、朕が衆を振驚するを畏忌す。汝に命じて納言(ノウゲン)と為す。夙夜、朕が命を出入して、惟れ信なれ。」舜曰く、「嗟、女、二十有二人敬めよや。惟れ時れ天事を相けよ。」三歳に一たび功を考し、三考して黜陟(チュツチョク)す。遠近の衆功咸興る。三苗(前に三危に流された混沌・窮奇・檮杌の三氏)を分北(ブンハイ)す。

『史記』現代日本語訳

〔承前〕

舜は大きな山の麓に入って、烈風雷雨に遭っても迷わなかった。尭はそれで舜が天下を授けるに足る人物だと知った。尭が老いた。舜に天子の政務を代行させ、巡察させた。舜は推挙されて、仕事を始めて二十年で、尭から摂政に任じられた。摂政になって八年で、尭が崩御した。三年過ぎて喪が開け、丹朱に帝位を譲ったが、天下は舜に帰属した。

そこで禹(ウ)・皐陶(コウトウ)・契(ゲイ)・后稷(コウショク)・伯夷(ハクイ)・虁(キ)・竜・倕(スイ)・益・彭祖(ホウソ)は、舜の時代からみな用いられたが、まだ職掌分担がなかった。そこで舜は尭の始祖・文祖の祭殿に詣でて、四方の総督(嶽)と相談し、四門を開いて賢者を集め、四方の事情に通暁して、十二人の地方長官(牧)を任じた。

舜は言った。「帝堯の徳をたたえ、厚く徳政を行い、口の回る者を遠ざければ、ただちに周辺の蛮族は、酋長が率いて服属するだろう。」舜は四方の総督に言った。「仕事が出来て、堯から受け継いだ天下を美しくする者がいるなら、官吏に採用し、政治を補助させよう。」

皆が言った。「伯禹は土木監督官(司空)として、帝の功績をさらに高めるでしょう。」舜が言った。「その通り。ああ禹よ、そなたは治水を行い土を平らにせよ。よく励め。」禹は舜を拝んで平伏して、稷・契と皐陶に地位を譲った。舜が言った。「言いたい事は分かるが、仕事に就け。」

舜が言った。「棄よ、庶民らが飢えようとしている。そなたは食糧長官(后稷)として、時に合った穀物を播かせよ。」舜が言った。「契よ。官吏らは互いに親しまず、父母兄弟子の秩序(五品)も正しくない。そなたは行政長官(司徒)として、五品を敬んでその教えを説き、寛大に行政を行え。」舜が言った。「皐陶よ、蛮族(蛮夷)が中華(夏)の地を乱し、盗賊や謀反人がいる。そなたは司法長官(士)になれ。入れ墨・鼻削ぎ・足切り・去勢・死刑の五刑には基準がある。五刑の処刑場には三つの定まった場所がある。五刑をゆるめた五流には、決まった流し場所がある。五つの流し場所には遠・中・近の三つの区別がある。それらに明らかに従い、偽りのない司法を行え。」

舜が言った。「誰か職人らの頭に出来る者はいないか。」皆が言った。「垂がよろしいでしょう。」そこで垂を職人頭(共工)に任じた。舜が言った。「誰か天地の草木鳥獣を司れる者はいないか。」皆が言った。「益がよろしいでしょう。」そこで益を自然管理長官(虞)に任じた。益は舜を拝み、平伏して他の臣下や朱虎・熊羆に地位を譲った。舜が言った。「仕事に就け。そなたは万物を調和させよ。」そこで朱虎と熊羆を副官にした。

舜が言った。「ああ、四方の総督よ、天神地祇亡霊の祭祀(三礼)を司れる者はいないか。」皆が言った。「伯夷がよろしいでしょう。」舜が言った。「ああ伯夷よ、そなたを祭祀長官(秩宗)に任じよう。昼も夜も仕事に励め。天地人のたましいを敬い、正直であれ。清潔であれ。」伯夷は、虁と竜に地位を譲った。舜が言った。「言いたい事は分かる。」

そこで虁を音楽長官(典楽)に任じ、天子や貴族の子を教育させた。舜が言った。「正直で、そして温和であれ。寛大であり、かつ厳しくあれ。厳格であって、かついじめるな。飾り気無く、そして思い上がるな。詩は心を表し、歌は言葉を長くし、声は永く伸ばすことで整い、音律は声を調和させる。金属・石・糸・竹・干した瓜の皮・土・革・木の八種の楽器が調和し、旋律を互いに乱さなければ、神も人も和むだろう。」虁が言った。「ああ、私が石を大きく、小さく叩けば、百獣がこぞって舞うだろう。」

舜が言った。「竜よ、私は偽りの告げ口を絶ち、人々を騒がせるのを嫌う。そなたを伝達官(納言:ノウゲン)に任じる。昼も夜も、私の命令を伝えるに当たって正直であれ。」舜が言った。「ああ、そなたら二十二人、仕事を敬め。天の運行を助けよ。」

舜は三年に一度管理の業績を調べ、三度考え直して昇進降格を決めた。遠近の官吏の業績が上がった。すでに辺境に流した混沌・窮奇・梼杌の三苗がさらに邪悪にふけったので、さらに遠くに追放した。

『史記』訳注

なし

『史記』付記

思案中

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コメント

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